口唇閉鎖計の圧力センサーが
左右の口唇台座にあると分かる事

はじめに

口唇は口を開閉する機能を持って、摂食,嚥下、構音や呼吸機能の働きに関係しています。
口輪筋を含む口腔周囲筋には摂食・構音のために口唇をやや斜め上下、前後方向に微妙に開閉する働きがあります。この動作に連動して舌及び口腔後部筋組織機能とも密接に関連している為に従来は口唇閉鎖力測定を左右の口唇を一塊と考えて「上下又は前方向に閉じる筋力はどれ程あるのか?」という単純な考えで計測されて来ました。ところが、高齢化の進行で市民の誰でも疾病が在って当たり前の時代に突入して来ました。「過去に疾患が起きたのだから同じ疾患が再発し易い身体の筈!」との考に立てば、いつ何時、同じ疾病が再発しても不思議はないと考え、次回に同じ疾病が再発する可能性をなくす努力も必要です。それを示唆する為の計測器が必要と作製しました

左右の口唇閉鎖力を調べると分かる事

  • ① 測定時の数値は測定当事者だけでなく、患者家族の気持ちも確実に変化をさせます。
    口唇は脳神経の支配下の下に動くので「脳の働き状況」を推測する事もできます。
    左右がほぼ同様な数値であれば左右を支配している脳には先ず問題はありません。
    左右がほぼ同じ数値で口唇閉鎖力が弱ければ「口唇の働き」そのものが弱い事を示しますので、取り敢えず強化のために口唇機能活性化のための口唇ストレッチをする必要があります。口唇閉鎖力はリハビリ開始前とその後の改善効果の有無も数値で示されます。

  • ② 左右の口唇閉鎖力に違いがあった時には、事故による障害か、脳の片側に病気を生じ、その部位の脳の働きに問題が生じており、その程度によって反対側の身体の筋組織の働きに機能麻痺を含む障害が起こります。少しでも麻痺が有るとその反対側の支配下部位は麻痺を起こします。何か脳に問題(大きな脳血管疾患や極々小さな疾患迄)がある事を示唆いたします。
    右側の脳に問題があれば左側の口唇(左側全体に麻痺があってもなかなか一目瞭然とはいきません)に脳の麻痺の状況に応じて麻痺が現れます。症状は後述致しますが典型的な症状でないと見落としがちです。しかし数値でその差が比べられると話は違います。先生方には「数値がこれこれこうですからこうですよ」と患者・家族に自信を持って話す事が出来る強みが生まれるとともに、患者家族から先生への信頼の向上に繋がるのでさらに後々の治療にも繋がります。

  • ③ 隠れ脳梗塞で全く発症に気付かないほど軽症であったのは幸運そのものと言えます。
    起きた脳血管疾患の程度で重症から極々軽度まで疾患の程度と機能障害の状況も様々です。
    しかし脳梗塞を起こしたことに変わりはありません。重症であれば症状も重症化なので、脳血管疾患が起きた事を見落としませんが、反対に極軽度の脳血管疾患ならば、その麻痺等による機能障害は軽く、不自由を感じない事まであります。多くの人は医療に関し素人ですから、時として脳血管疾患が起きた事すら気付かない『隠れ脳梗塞』の人が多数いると言われています。
    極軽い脳梗塞で気付かずに過ごしていた人でも、これからは既往症の有無を知るために身体の左右に筋弛緩の有無を調べておく必要があります。左右差があれば、それは軽度であっても脳に何か問題が起きている可能性があると疑うべきでしょう。


隠れ脳梗塞の発見の意義

高齢化の進行に伴い隠れ脳梗塞の人が増えていますが、『隠れ脳梗塞』を発病した人は脳梗塞になった事にさえ気付かないので何の対策もしていません。重篤な脳梗塞になりMRIで初めて幾つかの『隠れ脳梗塞』の発病が過去にあった事を指摘される例が多くあります。
健康人に比べ脳梗塞発病の条件が高いために重篤になって再発する可能性が高くなります。
簡単な器具で「隠れ脳梗塞の人=軽度の片麻痺の人」を簡単に「歯科」で見つけ出し、専門医に紹介し、脳梗塞の再発を未然に防いで差し上げる事ができるのです。
歯科医師会は「医科歯科連携」の掛け声だけは高くとも、現実は脳血管障害患者の後遺障害リハビリを患者家族に任せているのが現状です。連携とは対等関係でなければなりません。潜在的糖尿病患者を歯周病検診に際に見つけ出したり、口唇閉鎖力の検査の際の僅かな差に注目して「隠れ脳血管疾患の患者さん」を見つけ出して専門内科に紹介したり、又この逆にお医者さんから歯科に紹介されることもあるべきと思います。「過去に疾患が起きていたなら再度同じ疾患が再発し易い体質の筈」という前提で、いつ何時、同じ疾病が身体に起きても不思議はないと考えましょう。前回の発症はたまたま軽症で済んでいた事を幸いとし、再発の可能性を歯科からも除く努力が必要です。

脳梗塞の典型的後遺障害

食事中の「よだれ」、「食事中のむせ」、「飲み込みが悪くなった」、「言葉がハッキリしない」、等々を自覚する事や家族に指摘されて初めて知る事があったならば「脳の老化」や「隠れ脳血管障害の後遺症」が疑われます。先ずはほんの数分で測れる「左右の口唇閉鎖力に差が無いかどうか」を調べてみる事は確実に「転ばぬ先の杖」となる事でしょう。
測ってみて左右に差があれば、過去に脳梗塞を起こした可能性が高いことを示唆しており、再発予防のために内科の先生に検査をお願いするべきです。
脳血管疾患は普段から不整脈、高脂血症等々の誘発要因となりますが、今回は障害が軽かったため誘発要因が不明かもしれませんが、何れまた自分の身に再発が有る筈と考え、この際にしっかり原因究明をして貰いましょう。毎日の血栓防止薬の服用が必要かもしれません。お医者さんに診て頂いて、隠れ脳梗塞であったならば再発予防に励みましょう。次回の再発も又軽い物であるという保証はないからです。患者さんが元気な内にぜひ専門医を訪ねることを勧めて下さい。

脳梗塞の極軽い後遺障害

口唇の閉じる力は口唇の開け閉めにとどまらず、広範囲に影響を与えております。左右の口唇閉鎖力が同じだから毎回同じ様に自然に舌が口蓋の方に持ち上がり、水を飲み込む時にも「むせる」事無く喉元を通過します。発語も呼吸も皆左右同じ力を持っているので可能な事です。
口唇から舌や喉までの全ての機能は一体的に連動する事で、その調和がいわゆる「口腔筋機能」として常に正確に再現されております。これが一瞬でも再現できない・不完全であると「口腔機能発達不全症」とか「口腔機能低下症」とか称せられる新しい症病名が付けられる訳です。
1》食物残渣が口の中に残るので虫歯に成り易い
2》ヨダレは普段垂れないけれども
① 水を飲む時に麻痺側から水が漏れる事が見られる
② 舌運動も、吹く力も問題ないのに「しっかりつぐめない」
③ 嚥下圧が充分とれないので喉の奥にへばり付く「咽頭残留のリスク」がある
④ 当然、誤嚥性肺炎のリスクも高くなります
⑤ 目いっぱい笑った時、自然の笑顔に歴然とした差がでる
こんな症状があるのにも拘らず全く気に留めない方は大勢います。

数字の不思議な魅力

測定時の数字には不思議な魅力があります。どなたも本能的に自分の「数値」を知りたがります。子供時代の通知表を見て一喜一憂する気持ちと同じと思います。悪ければ次までに頑張ろうと思うし、良ければ嬉しいと思うことでしょう。口唇閉鎖力の測定は手軽で、無痛、短時間なので、嫌がる人は考えられません。
今の歯科の患者さんが元気でいる限り、いずれまた、今回来院した疾患とは別な疾患で来院して下さることもあるでしょう。「軽症時に隠れた疾患を見つけて下さった先生だ」と感謝している患者さんは、先生を信頼しているので必ずまた先生の診療所を訪ねて下さる筈です。

むすび

報道によると東京オリンピックの頃は100歳を超える超高齢者が10万人になるといわれています。
来院患者数減少と在宅訪問診療患者数増加は必定です。毎回の訪問診療時に血圧や酸素飽和度の測定とともに、口唇閉鎖力の数値の強弱で今の患者さんの容態を知る一助ともなるので訪問診療時の患者・家族への信頼構築にとても便利です。
医療に素人の方に対しても計測数値は不思議な魅力と安心・納得を与える効果があります。
来院患者さんの中にも毎日MFT改善のために熱心に口唇のストレッチをされている方が居ます。この様な方は特に、前回からの改善効果を知りたくて来院の度に口唇閉鎖力計測の数値を知る事が楽しみの方も多数いらっしゃいます。リハビリと計測数値は有効なモチベーション効果があり会話のきっかけにも成り易く、この効果を再診回数に結びつけていけば診療成果に良い影響を及します。

PS  ※2019年から口唇閉鎖力測定器「ALC」を台数限定で発売予定です。
価格は3万円前後を予定しております。