2021.5.19

私の失敗経験から学んだ事(人の1歩先か2歩先か)

はじめに

物事に優先順位を付けられない人は必ず衰退します。歯科不況時、手っ取り早い自費の勧め方ではなく、底辺(該当者の多い人口)の広い層をどの様に自分の患者に取り込んで行くかです。対象分野は後段で話しますが、①潜在歯周病患者8,000万人+企業勤務者の検診と、②35万人の高齢者が歩行不自由です。 私の失敗・思惑違いを告白します。先ずはパタカラ開発からです。人は脳が発達したのだから人なので、ここを直せれば万全だと私は考えていました。 パタカラ開発で良い物が出来た。歯科の皆さん喜んで下さると期待しました。 聞き手の状況次第で、訪問診療を得意にしたい人、摂食嚥下を極めたいと思う人、口呼吸を直したいと思う人、歯周検査を無痛で正確にしたい人、興味は様々です。便利な物を作り出してもその方々の悩みとする心(診断名)に、直接又は全く響かない物は理解や好感を持たれません。他人の理解を得るまでに傷病名からピツと感じる、共鳴して下さる時もあれば、脳血流や閾値を丁寧に説明しても全く理解して貰えない事があります。悩みの関連で強く・長く解決策を求めていた時は、スーと理解が貰えます。今度開発のPkensaは①に関連し、日常診療の話なので理解が容易です。歯周検査を嫌がる市民の嫌悪感解消と術者の精神負担軽減と職責も果たせるからです。半歩先でないと相手の心には響きません。

雉射ち

私が中学生の時、父は鳥撃ち猟に嵌っておりました。ある日、「雉撃ちに行こう!」と猟に誘われました。用心深い父は猟の偶発事故を恐れ、初めてのお供でした。猟犬と一緒です。目的の猟場に着くと、そこは一面腰の高さの雑草です。駄々広い所を猟犬の後から、獲物に気付かれぬよう音を立てずに犬の追跡です。幾ら歩けども、雉、小綬鶏や土鳩にも遭遇しません。突然、獲物が近くにいる犬の合図、犬は主人と反対側にそっと回り込み、しっぽピンと伸ばし、主人の合図を待ちます。セミの鳴き声の中、父の強い「ヨシ」の合図で雉を主人の方に追い立てようと藪に飛び込みます。驚いた雉は周りの空気を震わせ、その反動を利用して飛び立つ際にけたたましくガタガタと豪音をまき散らし、私の方に向かって飛んで来て、飛び去りました。飛び立ちから逃げ去るまでが1瞬で、野鳥の雉の飛び立つ音響の迫力に圧倒され、初めて、雉の命がけの迫力を知りました。重爆撃機の迫力です。父も2連発の散弾を発射、直近からの射撃でも当たらず逃がしてしまいました。「獲物のホンのチョット先を狙わないと早過ぎて逃げられる。無我夢中だと上手く行かない」と小声でボヤいておりました。ヒット商品も望む器具の全体像から半歩先でないと、すんなりとは理解して貰えないのです。パタカラは脳機能改善器具なので50歩以上早過です。

障害を回避プローブの材質

プローブでは解決不可能と考えていた欠点を解消するには①先端形状を尖形の1点負荷荷重から平面の等分布荷重に変えれば激痛問題は解決します。②次に車のタイヤが縁石と衝突した際に滑らかに乗り上げるメカニズムをプローブ先端に組み込めば容易に問解決します。③歯根の形態は垂直、屈曲、表面は滑沢凸凹等様々です。歯根の変化に変幻自在になる様に材質は「シナリ」があるのが必須条件です。

受け入れ易い条件

人は自分が何で悩んでいるのか具体的原因に分からずに悩んでいる事があります。悩みの原因や本質が見えないからです。治療の成果の悩みを周りに転嫁出来ると、その性にして自分を納得させています。自分の気付いた事が悩みの本質であっても、現在の状況と大きく乖離すればする程、相手に響かず共鳴して貰えません。心に響いた時に他人は動きます。人は心の中と共鳴できて、初めて心が動き出す条件が揃うのです

パタカラの開発

パタカラは口腔筋機能訓練器具として開発しましたが、表情筋の効果効能が広すぎ、指導者は良い所取りの、食い散らかし状況でした。 表情筋の活性化に依る美容効果とか顔の皮膚に係る効果などには、当然な変化でも、女性歯科医師やDhには驚きの変化であったのでしょう。これは表情筋の半歩先にある極一部の目先効果なのです。「脳の活性化」の効果は敷居が高すぎたのです。歯科が舌の位置や形態を学習していたので、こちらは理解される方が多いと期待していましたが、現実には一部でした。表情筋と嚥下機能や呼吸機能との意識が「まあ近隣にある組織」程度で、距離が遠過ぎたのでしょう。お医者さんには受け入れて下さる先生が多かったのが不思議でした。

3歩目と現実

嬉しい事には理論は分からなくとも器具が改善してくれると自然体で受け入れて、訪問診療に採用して下さる歯科医師が多くいます。改善して感謝されると気持ち良い物です。その様な先生がパタカラを本人・家族に勧めて下さって効果を上げています。多数とは言えませんが、ご本人ご家族が効果を理解されているから続いているのだと思います。

歯科医師による訪問診療の意識範囲

訪問診療をお願いする本人や家族は歯科に何処までの機能回復を期待しているかを考えて下さい。歯科医師を医者でもないのに脳梗塞後遺症での構音障害や嚥下障害の回復まで出来ると期待をしているでしょうか、疑問です。手足の拘縮は脳組織の機能障害が原因です。脳を活性化させない限り脳機能は回復せず、喜びません。Dhは口腔ケアで口腔内を1次的に清掃して細菌数を減らして上げればそれで良いと考えているのでしょうか。看護師さんのする褥瘡性潰瘍予防と本質的に違うのに同一視しています。そんな疑問もなしにDhは口腔ケアをしていると思います。その程度でも患者・家族には費用がかかるので1時の感謝はあっても続きません。やがて、他人が家に入るのを嫌がるので断られます。

歯科医師の診断と予告

口腔も手足も拘縮の状況を目視すれば大よその脳の梗塞の罹患状況は推測できます。この認識が確り認識できると、逆の変化が改善の兆しにも応用でき、次回の改善予告が可能になります。私の講習会に参加して習得して下さい。次回までの改善目標は喜ばれます。

潜在歯周病患者の掘り起し

見えている歯周病症状は海に浮かぶ巨大氷山と同じで、実態はエベレストの巨峰と同じです。受診者に検査での実態を知らせて上げれば必ず納得します。潜在歯周病患者の多くは過去に歯周検査を受診した経験者です。受診時の不満は激痛と出血があっても、その結果が「貴方は健康です」の告知であっては毎年受診しようとの強い動機付けには不適です。市民は「痛い」、「出血」は病のシグナルと信じております。今迄の誤った常識を修正する説明なしでは生まれた疑問に納得できません。不信感の次から、自己診断で済ませます。 検査が無痛、これ検査の常識です。歯科は痛いから行くのは嫌だという時代は昔の事です。 医科の癌検診の進歩と簡易検査手段には驚かされます。痛いのは採血程度で、便や尿検査は無痛です。いずれ、血液と唾液は同根なので採血せずに唾液検査で多くが分かる筈です。

無痛のためにした関連工夫

点荷重は痛くて論外です。等分布荷重に先頭を尖らしても切っ先は面にしなくてはなりません。プローブ先端が歯石を乗り越えるために、野球に例えれば、2塁への盗塁防御に投手は目(歯肉の観察)で、二塁手の防御(歯石の存在)で盗塁(プローブ挿入)を防ごうとしています(縁石とタイヤの溝の関係)。盗塁が成功する様にプローブ先端をスルスルとポケットに潜り込めなければなりません。その上、盗塁成功しても二塁手と激突せずに華やかに見せる様に観客の目(羽毛の手触りの様にふんわりと柔らかく当たりまえ)に2塁に到達する使命があります。更に複雑にしていた要因は唇、舌、頬や口蓋面は直線形態とも言え平面形状でも挿入可能ですが、隣接面への移行部分は狭く湾曲しているので挿入が難儀です。多少の湾曲ならば幅の細い平面でも大丈夫ですが1工夫が必要です。その工夫に、先端部を5方向に回転できる工夫(嵌め込みに材質の弾性を最大限利用し、一時的に上下方向のシナリを応用して嵌め込み挿入をする)をしました。外せません。その回転可能で臨在歯の歯冠部の張り出すアンダーカットの障害も軽くなりました。

歯牙動揺度検査

歯牙動揺度の検査は易しいので検査軽視され気味です。でも歯牙植立状態を知る為に大事な検査です。器具の保持を上下に回転するだけで測定出来ます。歯牙の咬頭を器具の凹部に軽く嵌め込むだけで確りと測定できます。

見る(視覚)・触る(触覚)・痛い(痛覚)・匂い(嗅覚)

歯頚部が退縮すると食後、歯間部に食事残渣が挟まり楊枝を使用する機会が増えてきます。 Pkensaを使用した後は再使用できない材質ですから、検査後にこの器具を「歯周検査受診記念品」として差し上げて下さい。上げる使用目的はMY「爪楊枝」です。日頃、使い易い、痛くない、歯間部に馴染み易いと言う実感=見ても・触れても・歯科器具は痛くないじゃないかと言うイメージ作り、広告です。味覚が抜けて5感には少し足りませんが、歯科は好んで嫌な事をしていないという家庭内での話題作りや口コミの切っ掛けに最適です。

おわりに

コロナも歯周病も感染症です。感染から発症までの長短の時間の差です。後遺症は未だ未確定です。コロナの初期症状の味覚・嗅覚障害は要注目です。この障害は扁桃脳が障害する時に生ずる症状です。代表が認知症です。欧米では味覚障害は認知症の初期症状として知られておりますが日本では余り注目されておりません。欧米ではコロナの後遺症として認知症が増えると予想する論文が多く見られます。認知症診断に真っ先に歯科に訪れる患者さんが増えるだろうと思います。歯科は忙しくなります。


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