高齢社会・訪問診療への具体的挑戦方法
はじめに
誰でも公平に歳は取るので、高齢化社会は日増しに深刻化して当然です。政府も「老人が増える」=「若い働き手も足りなくなる」を見越して諸政策を進めています。歯科も『歩ける人が減る』=『訪問診療』に医療形態をシフトして行かないと立ち枯れに成りますよ。 治療をするに先立ち「正しい診断」が何よりも大切です。正しい診断のために以前なら高価な機器が必要でした。しかし、寝たきりの方の診断ともなると、周りの状況や余計な感情が重なり正しい診断を告げる事が難しくなります。リハビリ専門のお医者さんであっても、脳梗塞の後遺症に苦しむ患者さんお会いした時に、患者さんや家族が口関連の悩みよりも手の委縮や歩行できない事の方を強く訴えるので図らずもその状況に引きずられたリハビリを提案しがちです。お医者さんならば知っているのです。これは脳に梗塞が起きた為に起きた一連の後遺障害なで、手足の拘縮は脳が回復するまでは止むを得ない事だから先ず脳の回復を頑張りましょうとは分かっていても言えません。これらのハンデを理解して貰いながらの悪環境を乗り越えて最良と思われる方法のメニューを示すのは大変です。 |
一般人への治療目的と高齢者への治療目的との違いとは
総論の様になりますが、高齢者とはどんな人達かと聞かれたら、大まかに言えば①脳が衰え始めたか衰えた方、そして、②呼吸機能も衰えた方と私はお答えいたします。 今迄の歯科治療の目的といえば、子供から壮年期までの患者さんへは①歯牙欠損➨補綴、②虫歯➨歯冠修復でした。若年者ばかりならば、精密機械を準備すればその分快適に素早く治療が終了すれば患者さんと術者にとって互いに良かったのです。しかし、高齢者の治療目的は心身共に衰えや疾病から来る機能障害なので主に「脳と呼吸機能の活性化」の為のリハビリ治療へと変わります。 |
誤解し易い機能障害リハビリ
歯科医師も歯科衛生士も口腔ケアーについては理解してもリハビリについては誤解している方が多くみられます。多くのST、PT、OTの皆さんも考え違いをされるのは嚥下障害だとか口唇の片側麻痺だとか「局所の機能不全」だから局所だけでリハビリを繰り返せば求心性刺激で問題が解決できると誤解して(誤解する為の例を挙げれば、今迄は義歯の当る所、不都合な所を丁寧に削合する事で快適な義歯を作って治療してきたという成功体験が邪魔をしています) リハビリ治療に取り掛かると治療は絶対に成功しません。リハビリは解剖生理学の知識を総動員しつつ全治全霊を傾けて実施しないと最終的に上手く行きません。そう言う訳で、多くの口腔筋機能障害は脳機能の不全が原因ですから、結果を出す事に焦らないで、具体的な治療に先立ち「右側前頭葉脳血流の増加」を継続させて「脳の活性化」を図ってやれば後から良い結果が付いて来ると信じて実施していれば、やがてその好影響でリハビリ改善効果と自然に遭遇し、結果的に短期間で高齢患者さんに感謝されるという経験が出来ると思います。患者家族から感謝されますと本当に嬉しい物です。パタカラを先駆して使われている多くの歯科医師やDHは脳機能回復のメカニズム迄は分からなくとも、過去のリハビリの経験則から(今はパタカラを使えば脳が活性化する事はf-MRIで第1義は確認済みです)パタカラを使えば機能不全が改善する事を知っています。 未だパタカラのメカニズムを知らないから使わないでいる多くの先生方は訪問診療に際して、患者家族に喜んでもらおうと衝動的に「評判になっている目新しいこと」に飛びついていると、いずれも挫折感を味わい辞めるだけでなく患者家族の評判も落します。 |
脳血管疾患発病後の制度的顛末
今の制度では脳血管疾患発症後直ちに病院に入院出来ますが、3ヶ月経過後にはリハビリ病院に転移させられ、そこも6か月後には在宅療養を強いられます。病態の改善は二の次で入院期間だけで転移を強要され嫌も応も言えません。リハ病院には「訪問歯科診療」をご利用下さいという宣伝パンフが置いてあります。この一連の流れの何処かで歯科医が患者・家族と接触できれば訪問診療歯科診療の関係が構築できるのですが、今までOT・PT・STに散々治療してもらっても改善しなかった機能障害が、訪問歯科診療で直ぐに効果が出ないと、どうしても家族の気持ちはネガティヴな方に向き、「どうせ治らない」と決めつけてしまいます。自分の家の中に医療関係者とは言え他人を招き入れる煩わしさも手伝って、リハビリ効果がないと感じた途端に歯科訪問診療を簡単に断ります。反面、リハビリ効果を感じられると心理は逆になり信頼効果が強固になるものです。 確りしたリハビリ指導をしていると患者さんからの依頼は途切れる事はありません。 |
リハビリするに当り一番大事な事
リハビリの成果を上げるキーポイントは「必ず負荷刺激が閾値を超えるリハビリをする事」なのです。今自分が勧めているリハビリが必ず閾値を超えた負荷刺激となっているかを確認してリハビリを実施する必要が有ります。 閾値を超えない負荷刺激のリハビリでは何万回繰り返して与えても効果は出ません。 更に、高齢者へのリハビリ治療には幾つかのキーポイントがありますがそれに気が付かずにことを進めていますと結局遠回りを致します。 高齢者リハビリ治療に際して短期間で効果を上げる近道の方法は、①脳の活性化にエビデンスある事が確認されている(必ず閾値を超える負荷刺激を与え続けられる)方法はやがて、②治療期間(老化や障害のレベルにより異なります)が長くなってもやがて効果が出て来ますから諦めずに頑張って貰う事に話は尽きると思います。 |
閾値の問題とはチヨット違うけれどこれも大切な事
それと、リハビリする際にもう一つ忘れていけない大事な事は鼻呼吸する事です。そして、沢山の空気を取り込める事です。人は食べる事よりも呼吸出来なくなった方が確実に死に至ります。健康人には呼吸出来る事が普段から容易で、苦も無く出来ている為に呼吸の大事さ、有り難味が毎日の生活の中では意識されません。普段、食べる事にはお金が必要ですが息をするにはお金がかかりません。肺胞で多くの空気を取り込むと脳内への酸素供給も充分になる事が分かっていてもその割には大事さが意識されていません。(あえてここで空気と申した訳は赤血球と酸素が結びついて身体各所に運ばれて酸素がエネルギー代謝に必要不可欠という意識が強いのですが、空気には窒素が酸素以上に多くあるという事から存在意義が明確には分かりませんが窒素も大事な働きをしている筈と思っております。 鼻呼吸ストレッチ器具として、男性用に『花仙』、女性・子供用に『ハナカラ』を販売しております。後述しますが鼻へのカテーテルとして開発したのですが、市民にはこれをして寝た日から「イビキ」をしなくなったと絶好評です。 |
高齢社会のイメージとは
皆さんは具体的な高齢者のイメージをする事なしに只々漠然と『歳を重ねて老人になった人が増加した社会が高齢社会』程度の認識だと思います。 それも比較的元気な老人を思い浮かべ、所謂、誤解した『高齢者の概念』を持っています。 積極的に介護度4とか5の高齢者を見学されていれば高齢者の真の実像が理解できます。 |
概ね高齢者の身体的・精神的・口腔内特徴
総論の様になりますが、高齢者とはどんな人達かと聞かれたら、大まかに言えば①脳か衰え始めたか衰えた方、そして、②呼吸機能も衰えた方と私はお答えいたします。 今迄の歯科治療の目的といえば、子供から壮年期までの患者さんへは①歯牙欠損➨補綴、②虫歯➨歯冠修復でした。若年者ばかりならば、精密機械を準備すればその分快適に素早く治療が終了すれば患者さんと術者にとって互いに良かったのです。しかし、高齢者の治療目的は心身共に衰えや疾病から来る機能障害なので主に「脳と呼吸機能の活性化」の為のリハビリ治療へと変わります。 |
一般人への治療目的と高齢者への治療目的との違いとは
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普段の高齢者の心情
上記の弊害が複合的に重なると言動も次の様に問題な気持ちが潜在します。 高齢者は普段余り苦情などの意見は発言しませんが、一度「怒る」と同じ人とは思えない位に誰も止める事が出来ずに、堰を切る様に苦情を話します。意見や文句がなくとも以下のお気持ちは普段から高齢者の皆様お持ちだと覚悟された方が良いと思います。 ① 高齢者の心情は不安定で恐怖と安堵の繰り返しです。だから疑り深くもなります。 ② 床に就くと明日には機能障害が起きるのではないかという高齢者に忍び寄る恐怖心 ③ これだけお金が有るから死ぬ?まで経済的心配はないけど、呆けたらどうする ④ いったい最後に自分は死ぬ時はどうなるのだろうというエンドレスの底知れぬ恐怖 等々で家族が居ても財産があっても、不安と安心を繰り返す毎日を送る方々が増えてきております。高齢者と話をするときは必ず正面を向いて相手の目を見て話をしましょう。 私も高齢者の分類に属しますが、未だ寝た切りではないので、呑気な事を言っています。老人誰もが寝たきりになるまで、自分だけは大丈夫と根拠なしに自信満々です。そんな人でも寝込むと途端に思考回路が悪い方に変わり動き出します。これが老人の心情です。 |
デンタルショーでの幻影
そんな後期高齢者が仮にデンタルショーを見に行けば会場はユニット、X線、待合室等々立派その物を競っておりました。皆ピカピカな形から入ろうとする先生が失敗する例ですが、開業は息長い物です。患者さんが皆足腰丈夫で自院に足を運べる事が当然として「事を構えよう」としています、これでは絵に描いた餅、砂上の楼閣、「高齢社会の真の現実を知ろうともせず」にどんなに立派でピカピカな多種機能を持つ歯科用機器を完備した診療所で、受け入れ態勢完璧でも、活躍すべき舞台が訪問診療先に変わっては役に立たずに正に宝の持ち腐れです。 高齢者が激増するという事態は高齢社会の中で生き抜かざるを得ない時代ですから、先行資金は高齢者を対称に設備投資資金を宛てていなくては「不合理な発想」と言えます。 行政も、診療を持たずに訪問診療だけを生業とすることを今回の改正から認めたようです。今や時代の流れは大きく変わってきたのですから古い常識?の延長思考は時代錯誤です。 |
高齢者の毎日の日課
高齢者は日々足腰が弱り段々と歩けなくなります。日々の食料品すら買いに行けなくなる方が増えて来た事が大問題となっています。食料買い出しに無理に車を運転してブレーキとアクセルを踏み間違えて死亡事故等の事故を起こしているニュースが頻発しています。 また、高齢者は1つ疾病が起きると待ち構えていたかの様に潜在化していた他の疾病もどっと出て来ます。こうなると同居する家族は親には「負の連鎖」が起きない様に口腔ケアーの為に「訪問診療」をお願いするしか手立ては残されていません。 高額のユニット1台を買う資金で訪問診療器具を充実させるとか、クリニックによっては家庭で容易に使える「リハビリ器具を無償提供」し、その効果を観察に伺う事で日々の訪問診療にしている先生もいらっしゃるとも聞きます。確かに口腔筋機能リハビリ器具を知らなかった患者家族もこの効果を知ればどれ程先生方に感謝する事でしょう。 |
どんな器具類を充実させれば良いのでしょうか?
訪問診療は決して短期決戦型の診療ではなく、終末処置まで、すなわち看取りまでを視野に入れた長い目で診療計画を勧める必要が有る「エンドレスの長期間治療」です。確実に患者家族から信頼を得られると『かかりつけ歯科医』として長いお付き合いになります。 ですから、市民家族に確りした信頼を得る様に裏付けの有る事を進言し、高齢者の老化進行を少しでも遅く楽しく毎日を過ごせる手段を提案して対応しなければなりません。 その為にも、高齢者の老化進行の共通項として冒頭に挙げた様に、高齢者とは①脳の活性が衰え始めた又は衰えた方、②呼吸機能が衰え始めた方ですから、脳血流を増やし脳機能が確り働いて身体各部の筋機能を万全にし、同時にエネルギー代謝確保の為にも十分な酸素供給を提言する必要があります。それには、①誤嚥しない様に口腔筋機能器具でリハビリしてもらう事と②同時に毎晩の睡眠中に唾液を誤嚥して起きる軽い肺炎が多く見られるので呼吸機能を活性化する様に鼻呼吸ストレッチ器具を奨励すると喜ばれます。鼻呼吸ストレッチは熟睡できない人の「夜間トイレで目が覚める」悩み解消でも喜ばれています。 脳活性や呼吸機能の衰え等は外からの見た目にはわかりませんが、脳活性化と十分な呼吸量確保が出来て生活の基礎的条件が整い治療は出発点に立てたと思って下さい。 スタート台に立てれば後はそれほど難しい問題は残されておりません。 |
スマホの無料アプリの活用
今やスマホのない家庭は聞いた事が有りません。高齢者も所有が当たり前の時代です。残念な事に私もそうでしたから言うのですが、高齢者には機械音痴の方が多く、充分に活用出来ておりません。知人から睡眠中の状況を記録できる無料アプリの情報を教わりました。スマホを枕の横に置いてただ寝るだけで睡眠中の状況が記録され翌日には確認出来るのです。これは便利で優れ物です。この花仙の使用の有無だけで睡眠状況(睡眠中の呼吸が確保されているか否かだけのだけの違い)がこんなに違うのか、寝起きの爽快感が最近無くなった理由も納得できました。機器を開発するまでは睡眠中の呼吸の大事さを余り気にしていませんでしたが、歳を取ると当り前に出来た生活が徐々に出来なくなって来た大きな原因の一つが鼻の機能の衰えにあった事が解明出来た気分です。高齢者の多くは睡眠で悩みを抱え、口呼吸による口・喉の渇きは代表例です。訪問診療の合間に、チョッと花仙と無料アプリのやり方指導だけで、多数高齢者の睡眠の悩み解消が出来るだけで患者家族からの信頼は大きく変わることは確かです。 |
鼻呼吸ストレッチ器具「花仙」の武勇伝
小学校の同級生(75歳)が先日誤嚥性肺炎で緊急入院した時の事です。当然の様に看護師さんが鼻からカテーテルを入れ酸素飽和度を上げようとした時に、彼は「花仙が有るからカテーテルはいいです」と言って断り花仙を続けていたそうです。入院中、花仙の効果で酸素飽和度は常に98%~99%を保ち続けたそうです。鼻に器具を入れるにしても、鼻にカテーテルを入れているよりは格段に『花仙』の方が快適で行動範囲も広がり、「夜間トイレ」の悩みも解消して良く眠る事も出来ます。退院時に花仙を知らなかった看護婦さんは改めてこれは何ですか?と聞かれたそうです。 私も子供時代から毎日の軽い頭痛に悩まされて今に至りました。花仙開発後は頭痛から解放されたので毎日の鎮痛剤から解放されました。子供時代の寝相の悪さ、夢見の悪さ等々が空気不足のシグナルであったのでしょう。人生の大半を空気不足で過ごしていたのだと知らされた思いです。高齢者になると熟睡できなくなる方が増えるのは鼻の機能(鼻中隔下制筋の機能)が老化で衰えた弊害なのだろうと納得しております。 |
実技編
口唇に「パタカラW」を嵌める事で口腔筋機能のリハビリになると開発された器具なのですが、近年のf-MRI等を使った研究ではパタカラW使用で右側前頭葉脳血流増量が確認出来た事から脳の活性化が図れる事が分かりました。脳血流の増量を図り乍ら、鼻腔には『花仙』を嵌めて吸気増量するリハビリの「基礎的条件を完備」が整ったならば、後ほその方への障害のレベルに合わせて可能な範囲で、例えば手を動かしたり足を動かしたり首を回したりの簡単で無理のない動作の繰り返しを見守って上げれば良いだけです。それがリハビリになるので何方にでもリハビリのお手伝いが可能となります。リハビリは専門性が高い分野と信じている方には何か信じがたいかもしれません。結論から言うと、どんな人へのリハビリに際していても、『脳血流』と充分な脳で消費されるエネルギー代謝を充足できる『空気』の補給の下で身体の何処かを動かせば、後から自然に口腔筋機能改善もして来るからです。今度発売のMYパタカラは介護度4~5の方を対象に作りました。f-MRIで調べてみるとパタカラWの2倍を超す脳血流が確認出来、劇的な回復が期待できます。 身体の全ては脳の指令の下に動いています。「充分な脳血流」なしに、また「充分過ぎる空気」もなしには如何なるリハビリをして上げてもピクリとした改善効果も期待できません。 |
術前の状況確認
リハビリの術前にこの患者さんは状況がどの程度良いか悪いかを簡単に知る必要が有ります。私は左右のバランスの違いが大きい時は難症例だなあと覚悟してリハビリを始めます。 2019年に販売予定をしている口唇閉鎖計『ALC』は医療報酬の対象にもならない計測器なので医療雑貨で販売価格は3万円前後になります。ALCで口唇閉鎖力測定時に口唇を乗せる台座(口唇台座は口腔筋機能時の状況下で生ずる口唇の形態状況下での閉鎖力が計測出来ます)に2つのセンサーが内蔵されているので、もしも口唇を閉じた時に左右の口唇閉鎖力に違いがあれば数値で分かります。大きな差がある時は難症例だと知る事が出来ますし、左右の差が小さくなって来ればそれだけリハビリ効果が上がって来た事を示しますので、測定数値が患者さんの励みにもなります。患者さんのモチベーションの向上の為に準備して置くと凄く重宝すると思います。 |
隠れ脳障害患者の発見
又、中高年の方に隠れ脳梗塞の方が増えているとも聞きます。極々軽度な脳梗塞が発症したケースだと当の本人も気付かず、脳梗塞を発症した事すら知りません。次回の発症が極々軽とばかりは限りません。ALCで左右差がある方には内科を紹介してMRI検査等で既往歴が確認出来れば、血液がサラサラになる薬を飲む事でしょう。この準備でいきなり大きな梗塞が起こす率はそれだけで低下するので患者さんも安心されるし、歯科医にも感謝です。 |
患者教育と臨床現場教育
健康維持の為には口腔ケア、誤嚥の防止、構音訓練等々を日頃どう実施するかを知って頂く患者教育。二つ目は患者や家族に具体的に健康維持の実施方法を教える事に成ります。 臨床現場教育とは実践教育になりますが、これも正しい様で実は効果が上がらない事でも、デイケアやリハビリの現場で今でも効果があると信じて(効果がないのが分かっていれば誰もやりません)雰囲気だけで実践されている事実が多いのです(大衆心理としても、皆が集まってすると無効なリハビリでも効果が有るかもしれないと誤解しがちです)。確りと医学養育を受けていれば「生理学」で「閾値を超えないトレーニングは効果がない」事を習う筈です。しかし(自分達への人件費はかけて当然だが器具には)お金を一切かけたくないという事だけを前提にしていると、心の隙間にパタカラの器具を使えば効果が出ると聞いて「パタカラ」と唱えるパタカラ体操を試してみようとか、「あいうえ・・・」であるとかの声を発声するだけ、口唇や舌を動き回してみる等々を高齢者に実施させているだけでは口腔筋機能を司る筋群に有効な負荷がからないことは医学知識があれば無効なのは旧知の事なのですが、そもそも生理学で言う「閾値」という知識がないから、または忘れているから、何もしないよりはましという程度の気持ちでは挫折感を味わうだけです。高齢社会はお金がかかりますから無駄な経費は切り捨てないと税金にしわ寄せが掛かります。 矢張り生理学でも理の通る、ストレッチをする事で目的筋群に確実に「閾値を超える負荷がかっている」器具を使わないと成果が表れて来ないので患者家族の信頼も得られません。 |
余り知られていない脳梗塞発症後の自然治癒期間
脳梗塞発症を例にしますと、発病後の3ヶ月はリハビリの有無に関係なく誰でもその人の持っている自然治癒が起きる期間で60%前後の機能が自然治癒の為に改善するそうです、更にその後3ヶ月以内は5~10%が自然治癒しますが、その後はどんなに頑張ってもほんの数%も改善しないという事実が有ります。 発病後の3カ月内は発病直後に手足の動かなかった人がリハビリするとドンドン動く様になりリハビリ効果を実感するのですが、更に3ヶ月するともっと頑張ってリハビリしているのに目を見張るような改善効果が見られなくなってきます。悲しい事にはそれ以降はもっともっと頑張ってリハビリをしてもリハビリ効果が全く現れません。脳の改善を促す条件を整えずにリハビリを続けていても自然治癒期間を過ぎると改善が起きなくなります。 |
オーラルフレイルの為の理想のリハビリ器具
リハビリ器具を使う事、勧める事に躊躇いを持つOT,PT,STが沢山います。 この様な人達は人が手技で指導する事には限界があるという事を忘れています。 また、余り気にしながらリハビリを指導している人を見かけないのですが、常に最大吸気を取り込む事を考慮しないでリハビリをしても効果が上がりません。 この様な指導者は専門家であっても過去の臨床経験の中で脳梗塞発症後1年以上経過した患者の後遺障害を治癒させたという臨床経験がない為の誤解なのです。 ① 脳の活性化の為には脳血流の増加を測らなければなりません。 ② 脳血流の確実化の為に手芸の限界を超える機器を使う事が望ましい事です。 共通項から考えて見て下さい。脳にダメージが生じて起きた手足の障害は、発病時に手足の筋肉にはどこも問題はありませんでした、ただ単に司令塔である脳組織が梗塞等で病気になり、脳からの指令が出せなく成った事が原因で手足が動かなくなったのですから、脳組織の改善を図るリハビリをしない限りは脳組織には何もしていないのと同じで、ただじっと自然治癒を待っているだけの状況なのです。手足の動かなくなった真の原因をリハビリ(脳の活性化)しないのですから手や足が動く筈は絶対に有り得ない事です。発病後3カ月内に(ある程度までの脳に)おきる自然治癒があって手足が少し動く様になった現象を見た事でリハビリ効果(本当は脳の一部に自然治癒が生じた) が あったと錯覚をしてしまうから益々誤解を深めてしてしまい本末転倒をしてしまうのです。 |
様々な先生がいらっしゃるのには驚かされました。
保険診療でリハビリ器具を無償で提供する事をしても良いものかどうかが私には分かりませんが一応御披露致します。ある先生のお話です。その先生は以前から訪問診療に力を入れている先生で、営利目的な先生ではなく本当に慈愛に溢れた感じを受ける先生です。ご自身のお父様が脳血管疾患を発病し、救急病院の担当医に「寝たきりを覚悟しておいて下さい」と宣告された時に毎日集中治療室にパタカラを持ち込みリハビリをした結果、不自由ない生活に戻れた経験から『脳血流の改善!』に信念を持って勧められているそうです。 そう言う気持ちで障害ある寝たきり高齢者に伺い状況を説明した際に乞われると「無償」でパタカラを提供するのですが、その後にも毎週パタカラでのリハビリを熱心に指導されています。皆さん順次改善するので喜ばれています。私はその先生に無償でパタカラを上げても大丈夫ですかとお尋ねした所、料金的な事を聞かれたと勘違いされたのか、寝たきりで障害のある患者さんならば初診が1度おきればその後に毎回の訪問歯科再診料から始まり症例によっては障碍者加算等を始め、摂食機能療法や、その後の毎月の在宅訪問歯科加算等々があるので保険で充分ですし、パタカラが切っ掛けで患者さんが改善して下さる迄は必ず定期的に訪問を依頼して下さるので十分です。これが効果のないリハビリ器具ではこうは参りませんと自信を持ってお話し下さいました。 |
「鼻呼吸」と「口呼吸」について違いを知って下さい
口呼吸は悪くて鼻呼吸は良いと思うのは止めましょう。また、口にテープを貼るとか、鼻にテープを貼って鼻腔を広げようとチャレンジをするのも無駄ですから止めましょう。 本来人は鼻呼吸が正しく出来ていれば何ら問題がないのだろうと考えております。しかし、発育不全や、萎縮そして老化が潜在的要因で始めるとそれもほんの僅かな量なのでしょうが次第に鼻呼吸で吸い込む吸気総量が足りなく成って来ると人は本能的にそれを察知して、ほんの僅かに体位を変えたり、新しい癖を生じたりして不足分を補おうとして参ります。 呼吸に関しても鼻から吸気を吸い込む機能が足りなく成ってきた際に口でする呼吸が足りない分を補っている際に生ずるポーズだと思います。 |
マラソンランナーが見本です
TV中継で観られる様に、スタート前のマラソンランナーは誰一人として口をぽかんとして号砲を待っている人はありません。疲労もなく元気溌剌な選手は皆口を閉じて鼻呼吸をしております(これは健康な市民の日頃の状況と同じと考えて下さい)。30キロを過ぎて疲労が蓄積して来ると、口を開けて肩で息をするような姿勢になって来るとスピードも落ちて来ます(中高年の市民に例えれば毎晩イビキをかき、熟睡が出来なくなってきます)私は鼻呼吸だけでは充分な酸素摂取が出来ないと口呼吸の助けを借りるのだと思います。 |
鼻呼吸ストレッチ器具『花仙』と『ハナカラ』
この器具の特徴は、①内面がゴルフボールの凹凸にする事で吸気速度を早め吸気量を増やし、②吸気速度が上がると凹の内部は気圧が希薄になる結果、③鼻粘膜に触れる面にある凹みから鼻の分泌液が沢山吸い上げられて蒸散します、また、④広い入口から狭い出口に吸気が流れると速度が速まります、⑤出口の最後にある2枚の板が排気の流れの方向を集めてより吸気の流れの束を絞る効果があります。①~⑤の総合効果の結果は単に入り口を広く出口を絞った形態よりも、煙を利用したコンピューター解析をすると流速が100倍も早くなる事が確認されております。③の効果で充分過ぎる湿度を得た吸気の好影響で咽頭部のワルダイエル咽頭リンパ輪も保護されるので喉も傷めません。 |
おわりに
今や日本の社会も高齢社会に突入したのにリハビリその歴史はまだ浅く、これが良いという方法も確認されておりません。しかし、右側脳血流を増やす事で脳が活性化する事は間違いありません。それと共に食も大切と言われていますが、それ以上に食から得られた栄養をエネルギーに変える為と、また身体各部の細胞内ミトコンドリアを活性化させる為にも充分な空気の補給が睡眠中も充分に出来ていなくてはなりません。脳血流と空気供給が充分で初めて老化や疾病で起きた機能障害リハビリの前提条件である事は間違いありません。 この2大要素(①右側前頭葉増量、②総吸気量の増量)を踏まえたリハビリ指導に励んで下さい。皆さんその改善効果に喜んで下さると思います。 |
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